ニュースの概要
ベルシステム24ホールディングスは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する国内株式ESG指数3種類——MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数、FTSE JPX Blossom Japan Index、FTSE JPX Blossom Japan Sector Relative Index——すべてで継続選定されたと発表した。GPIFは約200兆円規模の資産を運用する世界最大級の年金基金であり、これらの指数に採用され続けることは、パッシブ運用資金が機械的に買い入れを続ける対象であり続けることを意味する。コールセンター・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という労働集約型事業を展開する同社が、評価方法の異なる3指数すべてで評価を維持した点は、業界内でも注目に値する動きだ。
引用元: ベルシステム24、GPIF採用のESG指数3本に継続選定(PR TIMES)
分析・見解
GPIFの3指数体系で「全て」継続選定される統計的な意味
GPIFが国内株式のESG評価に採用する指数は、MSCI系とFTSE系で設計思想が異なる。MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数は、業種内でESG評価が上位の銘柄だけを厳選して組み入れる「選抜型」だ。一方、FTSE Blossom Japan Indexと、業種内での相対評価に重きを置くFTSE JPX Blossom Japan Sector Relative Indexは、より広い裾野の企業を対象にしながら段階的に評価する「包含型」に近い。評価の切り口が異なる2つの評価機関、3つの指数すべてで継続選定されたということは、単一の評価軸でたまたま高得点を取ったのではなく、複数の視点から見ても一定水準を満たしていることを示す。これは機関投資家がESGスコアを一つの評価会社だけに頼らず、複数のベンダーのスコアを突き合わせて投資判断に使う実務とも整合的だ。
コールセンター・BPO業界に固有の人的資本課題
ベルシステム24のようなコールセンター・BPO企業は、製造業や小売業とは異なるESG課題を抱える。環境負荷よりも、従業員の離職率、非正規雇用の比率、感情労働(お客様対応のために感情を抑え続ける心理的負荷)への対策が評価の焦点になりやすい。GPIFが採用する指数群は近年、気候変動対応だけでなく人的資本の開示を重視する方向に評価軸を広げており、労働集約型産業にとっては待遇改善や研修制度の充実が、そのまま外部評価のスコアに跳ね返る構造になっている。継続選定は、こうした人材マネジメントの取り組みが評価機関から見ても形だけのものになっていないことの証左と言える。
指数組み入れがもたらす「見えない買い需要」
ESG指数への組み入れは、広報的な名誉にとどまらない実務的効果を持つ。GPIFをはじめとする年金基金や海外機関投資家の多くは、これらの指数に連動するパッシブ運用で株式を保有しており、指数の構成銘柄であり続ける限り、機関投資家の資金は人の判断を介さず機械的に買い支えに回る。逆に指数から除外されれば、同じ理屈で機械的な売却圧力にさらされる。つまりESG指数の継続選定は、株価を下支えする要因を一つ確保し続けることと同義であり、経営者が思う以上に株主構成の安定性に直結している。
継続選定のハードルは新規選定より高い
見落とされがちだが、一度選ばれた指数に翌年以降も残り続ける方が、初めて選ばれるより難しい。評価基準は毎年のように改定され、同業他社の取り組みが進めば、相対評価の基準点そのものが切り上がる。つまり「現状維持」の取り組みでは、評価が下がりかねない。ベルシステム24の継続選定は、業界内でESGの取り組み水準が年々上がり続けていることの裏返しでもあり、追随する企業にとっては毎年ハードルが上がるゲームに参加していることを意味する。
ビジネスへの影響
自社のESG評価が「年金マネーの投資対象」になりうるか点検する
上場企業の経営者がまず確認すべきは、自社がGPIFの採用する指数の評価対象になっているかどうかだ。対象に入っていながら評価が伸び悩んでいる場合、MSCIやFTSEの評価項目(環境・社会・企業統治それぞれの開示項目)を棚卸しし、どの項目で失点しているかを特定する作業から着手すべきだ。特に労働集約型の事業を抱える企業は、離職率や非正規雇用比率、研修投資額といった人的資本関連の開示を後回しにしがちだが、ここが近年の評価軸の重点であることを踏まえれば優先度は高い。
サプライチェーンと人的資本の開示を今期の重点テーマにする
ESG指数の評価機関は年々、自社単体の取り組みだけでなく、委託先・協力会社を含めたサプライチェーン全体の労働環境や、人的資本への投資状況の開示を求める傾向を強めている。コールセンターのように業務委託や派遣スタッフを多く活用する業態では、委託先の労働条件まで含めた開示体制を整えることが、次の評価サイクルでの加点要素になり得る。IR担当者は、決算説明資料にESG指数の選定状況を記載するだけでなく、どの評価項目で高評価を得ているかを具体的に開示することで、投資家の理解を深められるはずだ。
