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JPモルガンが原子力と送電網を1兆ドルのグリーン融資に含める意味と企業への波及効果

JPモルガンが原子力と送電網を1兆ドルのグリーン融資に含める意味と企業への波及効果

ニュースの概要

米大手銀行のJPモルガン・チェースが、エネルギー転換向け融資の考え方を見直した。1兆ドル規模のグリーンファイナンス目標の対象に、原子力発電と送電網を加える。送電網の近代化や電気自動車の充電設備も対象に入る。背景にあるのは、データセンターの増設や電動化によって電力の需要が急に伸びていることだ。同行は、需要の増加、エネルギー安全保障、電力価格の抑制という三つの課題を同時に満たすには、太陽光や風力だけでは足りないと見ている。天候に左右されず安定して電気を届ける電源と、それを運ぶ基幹インフラにも資金を回す必要がある、という判断である。

引用元: JPモルガン、原子力・送電網をグリーンファイナンスの対象に追加(Bloomberg)

分析・見解

電力需要の急増で、融資の物差しが変わり始めた

これまで銀行のグリーンファイナンス(=環境に良い事業への融資や投資)は、太陽光や風力など再生可能エネルギーが主役だった。ところが、生成AIを動かすデータセンターの増設や、工場と自動車の電動化によって、先進国でも電力需要が久しぶりに伸び始めている。

太陽光や風力は天候で出力が変わる。需要の伸びをすべて受け止めるには、蓄電池や予備の電源が欠かせない。JPモルガンの判断は、環境の理想より先に電力が足りなくなるという現実を、融資の設計に取り込んだものと読める。

原子力を緑に含める判断は、排出量で見れば筋が通る

運転中に二酸化炭素をほとんど出さない点では、原子力は風力や太陽光と並ぶ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価でも、発電1キロワット時あたりのライフサイクル排出量は、風力と同じ水準に収まる。

EUも2022年に、条件付きで原子力を持続可能な投資の分類に入れた。2023年のCOP28では、20か国以上が2050年までの原子力3倍増を掲げている。民間銀行だけが突出した決断をしたわけではない。政策の流れに金融が追いついたと見るほうが正確である。

本当の詰まりは、発電所より送電網にある

今回、最も重要だと考えるのは、原子力よりも送電網が対象に入った点だ。米国では、新しい発電所が電力網につなぐ順番を待つ案件が、合計で2,000ギガワットを超えるとされる。造った電気を運べなければ、どれほど安い再エネも価値を生まない。

送電線や変電所は地味で、投資家の目を引きにくい。事業の収益が規制で決まるため、民間資金も集まりにくかった。大手銀行が正面から資金を出すと示せば、電力会社は長期の設備計画を立てやすくなる。電気自動車の充電設備が並んで挙がったのも、需要側と供給側をつなぐ「配管」への投資という同じ文脈で理解できる。

定義の拡大が招く批判に、どう備えるか

一方で、懸念も残る。原子力は建設費が膨らみやすく、工期の遅れも珍しくない。使用済み燃料の処分という長期の課題もある。環境団体からは、緑の看板を広げすぎれば本来の再エネ投資が薄まる、という批判が出るだろう。

融資目標の数字を達成しやすくするために定義を広げたのではないか、という疑いも向けられかねない。銀行側には、対象の基準、排出削減の測り方、進み具合の開示を、これまで以上に丁寧に示す責任がある。他の大手行が追随するのか、欧州の銀行が慎重な姿勢を保つのかで、市場は二つに割れる可能性がある。

ビジネスへの影響

資金調達では、事業が「緑」と認められる範囲を再確認する

銀行のグリーン分類が広がれば、これまで対象外だった事業にも、低い金利や専用の融資枠が使える可能性が出てくる。電力設備、送配電の部材、蓄電、充電設備、工場の受電設備の更新などを手がける企業は、自社の投資計画がどの分類に当たるかを、取引銀行に早めに確認したい。

ただし分類は銀行ごとに違い、後から見直されることもある。融資条件に環境目標が結びつく場合は、達成できなかったときの金利上昇まで含めて契約書を読むことが大切だ。

電力調達は「再エネ一本」から、複数の電源を組み合わせる発想へ

自社の脱炭素計画も、見直しの時期に来ている。再エネの電力を契約するだけでは、停電のリスクや価格の変動を抑えきれない。原子力を含む低炭素電源の電力契約、蓄電池、自家発電を組み合わせ、費用と安定性と排出量を同時に比べる必要がある。

サプライチェーン排出量(=取引先を含めた排出量)の開示を求められる企業は、電源構成が排出係数にどう響くかを、年度ごとに試算しておくとよい。

投資家向けの説明では、定義の違いを先に示す

サステナビリティ報告では、「何をもって環境に良いとするか」を自社の言葉で説明できるかが問われる。原子力や送電網への投資を含める場合は、排出削減量、安全対策、廃棄物の扱いを並べて示すと、批判への備えになる。

小さな会社でも、取引先の銀行や投資家がどの基準で見ているのかを把握するだけで、対話の質は上がる。まず自社の電力使用量と投資計画を一覧にすることから始めたい。

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