ニュースの概要
米Citiが、テキサス州でApplied Carbonが進めるバイオ炭プロジェクトを資金面で支える金融商品を組成しました。規模は7,200万ドルで、期間は3年半です。元本は守られる設計ですが、収益は検証を受けた炭素除去の実績に連動します。Citiによると、成果連動型の債券として炭素除去そのものを連動対象に据えた案件は同社で初めてです。従来のグリーンボンドは「資金を何に使うか」を約束する商品でした。今回のノートは「実際に何トン除去できたか」を投資家の収益に結び付けます。お金の使い道ではなく、環境面の結果に値段を付ける点が大きな違いです。
引用元: Citi、炭素除去プロジェクト連動型ノートを7,200万ドルで組成(Sustainable Finance Daily)
分析・見解
使い道ではなく結果に払う、という発想の転換
グリーンボンドは、調達した資金を環境事業に使うと約束する債券です。ただ、その事業が実際にどれだけ温室効果ガスを減らしたかまでは、利回りに反映されません。今回のノートは、そこを変えました。検証された炭素除去量に収益が連動するため、投資家の関心は「使い道が正しいか」から「成果が出たか」へ移ります。
これは、病院への寄付と成功報酬型の治療費の違いに近いものです。前者は善意に払い、後者は結果に払います。
バイオ炭が選ばれた理由は測りやすさにある
バイオ炭は、木くずや農業残渣を酸素の少ない状態で熱して作る炭です。土壌に入れると、炭素が数百年単位で固定されると考えられています。設備が比較的小さく、製造量と炭素含有量を計測しやすい点が特徴です。
空気中のCO2を機械で吸う直接回収は、1トンあたりの費用が数百ドルに達することも珍しくありません。バイオ炭は費用が低めで、実績も積み上がっています。成果連動の金融商品を最初に作る素材として、計測のしやすさは大きな利点です。
元本保護でも、収益の不確実性は消えない
元本が守られるため、投資家が失うのは本来得られたはずの上乗せ分に限られます。この設計は、慎重な機関投資家が参加しやすい形です。一方で、除去量が計画を下回れば収益は減ります。
ここで効くのが第三者検証の質です。除去量の算定が甘ければ、商品全体の信用が揺らぎます。過去には、森林由来のクレジットが過大評価されていた事例が相次いで指摘されました。バイオ炭は製造量を実測できる分、その種の問題は起きにくいとされますが、土壌に入れた後の炭素残存率には推定が残ります。
次に問われるのは、規模と価格の安定である
7,200万ドルは、世界の債券市場から見れば小さな数字です。意味があるのは金額ではなく、前例ができたことです。大手銀行が一度仕組みを作れば、他の銀行や保険会社が同じ型を使いやすくなります。
今後の焦点は二つあります。一つは、除去クレジットの価格が安定するかどうかです。もう一つは、検証機関の基準が国際的にそろうかどうかです。この二つが整えば、炭素除去は寄付的な支出から、投資対象へと変わっていきます。
ビジネスへの影響
自社の脱炭素資金の集め方が変わりうる
炭素除去プロジェクトを持つ企業にとって、成果連動型の商品は新しい資金源になります。従来のように使い道を説明して借りるのではなく、除去実績そのものを担保の代わりに示せるためです。測定と記録の仕組みを早く整えた企業ほど、有利な条件を引き出せます。
実務では、製造量、搬入先、炭素含有量の記録を日々残す体制づくりが第一歩です。
購入側は、除去クレジットの質を見極める力が要る
排出量が大きい企業は、除去クレジットを購入する立場になります。今後は価格だけでなく、検証の厳しさ、耐久年数、二重計上の有無を比べる必要があります。安いクレジットは、後で信用を失うリスクも抱えます。
調達部門と環境部門が一緒に、購入基準を文書で決めておくことをお勧めします。
銀行や投資家との対話に使える材料が増える
金融機関は、結果を確認できる案件を求め始めています。自社の取り組みを「何をしたか」ではなく「何トン減らしたか」で語れるようにすると、融資や投資の相談が進めやすくなります。開示の準備は早めに始める価値があります。
