ニュースの概要
英国の運用会社Finance Earthと、アフリカの金融市場づくりを支援するFSD Africa、その投資部門のFSD Africa Investmentsが、「Africa Nature Impact Fund」を立ち上げた。目標規模は1億ドルである。自然を活用した気候対策、自然由来のカーボンプロジェクト、生物多様性に関わる事業など、まだ事業の形が固まっていない初期段階の案件に資金を出す。2027年に予定する初回クローズ(=最初の資金募集の締め切り)では、2,000万ドル規模の確保を見込むという。アフリカでは自然を守る事業の需要が大きい一方、投資家が入りにくい段階の資金が足りない。新ファンドはその空白を埋める試みとして位置づけられる。
引用元: アフリカの自然資本向けインパクトファンド、1億ドルを目標に設立(ESG Broadcast)
分析・見解
立ち上げ期の資金切れが自然関連事業を止める
自然関連の事業は、完成後よりも立ち上げ期に資金が詰まりやすい。土地の権利整理、地域住民との合意、森林や湿地の調査、クレジット発行の手続きなど、収入が出る前に費用が先に出ていくからだ。大手の機関投資家は、規模が小さく実績のない案件には手を出しにくい。結果として、意義はあるのに投資が決まらない案件が山積みになる。
新ファンドが初期段階に絞ったのは、この谷間(=事業が育つ前に資金が途切れる区間)へ直接お金を入れるためと読める。1億ドルは巨額ではない。ただ、調査や準備の費用に充てれば、後から入る大型投資を呼び込む呼び水になり得る。
信頼を失ったクレジット市場で問われる質
自然由来のカーボンプロジェクトには、ここ数年、厳しい視線が向けられてきた。2023年には、大手認証機関が認めた森林クレジットの多くで、削減効果が実態より大きく見積もられていたとの調査報道が相次いだ。買い手は品質を重く見るようになり、安くて大量のクレジットは売れにくくなっている。
一方、地域社会への配慮や削減量の測定が丁寧な案件には、高い価格が付く傾向がある。初期から関わるファンドは、測定方法や利益の分け方を出発点で決められる。後から直すより、はるかに費用が安い。ここが初期投資の本当の強みだと考える。
公的資金と民間資金を組み合わせる設計の意味
FSD Africaは、英国の開発支援資金を背景に、アフリカの金融市場づくりを進める組織である。こうした組織が運営側に入ると、ブレンデッドファイナンス(=公的資金と民間資金を組み合わせる手法)を使い、最初の損失を公的側が引き受ける設計を取りやすくなる。民間投資家にとっては損失の上限が見えるため、参加しやすい。ただし、このファンドが実際にどの形を採るかは、現時点の情報からは分からない。
自然関連の投資は、収益が出るまで時間がかかり、収入の形も不安定である。同じ1ドルでも、通常の投資より待つ期間が長い。この「待つ力」を公的資金が補えるかが、民間資金を集められるかどうかの分かれ目になる。
2027年の初回クローズまでに見るべき三つの点
初回で見込む2,000万ドルは、目標の2割にあたる。ここまでの道のりで注目したいのは三点である。第一に、民間の投資家がどれだけ参加するか。第二に、案件の出口をどう描くか。小さな自然関連事業は、売却先が少ない。第三に、収入をクレジット販売だけに頼らない設計になっているかである。持続可能な農業、エコツーリズム、水源の保全などを組み合わせれば、クレジット価格が下がっても事業は続く。
私は、このファンドの最大の価値は資金額より、初期案件の実績データが積み上がる点にあると見る。どの手法でいくら費用がかかり、地域にどれだけ利益が残ったか。その記録は、次の投資家にとって最良の判断材料になる。
ビジネスへの影響
日本企業が自然関連の調達で押さえたい選び方
日本企業にとって、アフリカの自然関連事業は遠い話に見えるかもしれない。だが、カーボンクレジットの購入や、原材料の調達先での森林保全を考える企業には直接関わる。まず、購入するクレジットの出どころを確認したい。初期から測定と地域との合意を整えた案件かどうかは、将来の評判リスクを左右する。価格の安さだけで選ぶと、後で品質問題が出たときに説明が難しくなる。
購入先を一つに絞らず、少額でも複数の案件に分けると、案件ごとの失敗を吸収できる。
投資や協働の入口として使える具体的な手順
次に、自社が資金を出す側になる場合を考える。大手でなくても、ファンドへの出資や、共同で案件を育てる協働は選択肢になる。進め方は次の順がよい。まず、自社の事業が自然に与える影響を把握する。次に、影響の大きい地域や原料を特定する。そのうえで、その地域に関わる投資先を探す。順番を逆にすると、目的のない寄付に近い支出になりやすい。
また、TNFD(=自然関連の情報開示の国際的な枠組み)に沿った開示を準備する企業は、こうした投資を自然への依存と影響に対する具体的な対応として説明しやすい。ただし、投資額だけを示しても評価は得にくい。成果の測り方まで合わせて示すことが重要である。
判断前に確認しておきたい三つの質問
最後に、検討時の質問を挙げる。第一に、費用の何割が現地に届くのか。第二に、削減量や保全の成果を誰がどう測るのか。第三に、収入がクレジット価格に左右されすぎない設計か。三つに明確に答えられない案件は、見送る勇気も要る。ファンドの初回クローズは2027年なので、それまでに自社の方針と予算の枠を決めておけば、案件が出そろった段階で慌てずに済む。
